「子宮内膜」の細胞を採取し遺伝子分析を行い、子宮内膜が胚の着床を受け入れる時期(着床の窓)を調べる検査です。これにより移植に最適なタイミングを知ることができます。

妊娠の成功には、胚だけではなく子宮の状態も大きく関わります。
移植前には、卵管造影検査、子宮鏡検査、自己免疫検査により着床のための環境を確認するほか、
1人1人の「着床の窓」(Window of Implantation, WOI)が開くタイミングを知ることが重要です。
ERA(子宮内膜着床能検査)により、最適な着床時間を確認することで、最適な時間に「タイミングを狙った胚盤胞移植」を行い、妊娠率を高めることができます。

 

ERA検査とは?

子宮内膜が胚の着床を受け入れる時間は決まっています。
この時間のことを「着床の窓」(Window of Implantation/WOI)といいます。

約70%の方の「着床の窓」は、生理18~20日目に開きますが、残りの30%の方は、この時期には開きません。
ERA(子宮内膜着床能検査)では、黄体ホルモン補充後の子宮内膜の一部を採取し、次世代シーケンサー(NGS)により着床能と関係がある248個の遺伝子の働きを分析することで、子宮内膜の着床能力を評価します。
検査結果は受容期(Receptive)または非受容期(Non-Receptive)に分類され、結果に従い、ご自身の着床の窓に合わせて胚移植を行うことで、妊娠率を高めることができます。

 

こんな方にお勧めです

    • 35歳以下または卵子提供(卵子バンク)を受けた方で、胚移植を1回行ったが妊娠に至らなかった場合
    • 43歳以上の方
    • 関連検査(例:卵管造影検査、子宮鏡検査、自己免疫検査)は全て正常で、
      PGT-A/PGS検査を行い染色体が正常な胚盤胞を複数回移植したのにもかかわらず、妊娠に至らなかった方
    • BMIが標準値を超えている方
    • 内膜の厚さが7㎜以下の方

 

ERA検査の流れ

  • ① 生理1日目
    • 当院にご連絡ください
      ERA検査までのスケジュールをご案内します。
  • ② 生理4日目
    • エストロゲンとアスピリンの服用を開始します
  • ③ 生理10~12日目
    • 黄体ホルモン剤の服用時間を決定するための検査を行います
      超音波検査(子宮内膜の厚さ)
      採血検査(E2、P4)
  • ④ 生理18~20日目
    • 黄体ホルモン剤服用120±3時間後に、
      子宮内膜の細胞採取を行います。
  • ⑤ 検体の送検
  • ⑥ 18営業日(約3週間)後に検査結果が出ます
    • 検査結果は当院アプリでご確認いただけます
    • 検体の質や量に問題があり、検査を行うことができない確率は約6.5%です
      (うち、シグナル無しの結果となり判断ができない1%、検体不良3%、検体のRNA量(情報量)不足2.5%)
      このような場合、改めて生検(細胞の一部採取)が必要となります

 

ERA検査方法

ERA検査は麻酔の必要はありません。細く柔らかい器具を膣から子宮内に挿入し、子宮内膜細胞を採取します(EMMA検査、ALICE検査をご希望の場合は同時に行います)。
組織の採取は3分程度で痛みは人によって違いますが、生理痛のような軽度の痛みを感じる方が多いようです。
また検査後は少量の出血を伴う場合もありますが、いずれも正常な現象なのでご安心ください。

 

ERA検査の結果

検査結果は受容期(Receptive)または非受容期(Non-Receptive)に分類され、結果が出るまで3週間ほどかかります。
非受容期(Non-Receptive)と判定され、組織採取のタイミングが着床の窓と大きくかけ離れている方や、組織が不十分で判定が得られなかった場合など、約10%の割合で再検査を行う必要があります。

 

着床に適している

  • 受容期初期(Early-Receptive) ➡黄体ホルモン剤の服用開始を早める
  • 受容期  (Receptive)
  • 受容期後期(Late-Receptive) ➡黄黄体ホルモン剤の服用開始を遅らせる

 

着床に適していない

  • 非受容期(Non-Receptive) ➡再検査をお勧め
  • 受容期前(Pre-Receptive) ➡移植日を遅らせる
  • 受容期後(Post-Receptive) ➡移植日を早める
受容期前(Pre-Receptive)
着床に適さない(早すぎる
2日 再検査をお勧め
1日 24時間遅らせて移植
受容期(Receptive)
着床に適している
受容期初期(Early-Receptive) 12時間遅らせて移植
受容期(Receptive)  
受容期後期(Late-Receptive) 12時間早めて移植
受容期後(Post-Receptive)
着床に適さない(遅すぎる)
1日~2日 再検査をお勧め

子宮内膜の状態

ERA検査の結果
Aさん Pre-receptive 受容期前
着床に適さない(早すぎる)
次の移植周期に、黄体ホルモン剤の服用期間を延長する
Bさん Early-Receptive 受容期初期
着床に適している(黄体ホルモン剤開始を要調整)
次の移植周期に、黄体ホルモン剤の服用開始を12時間早めて移植する
Cさん Receptive 受容期
着床に適している
次の移植周期も、同様のタイミングで黄体ホルモン剤を服用し移植する
Dさん Late-Receptive 受容期後期
着床に適している(黄体ホルモン剤開始を要調整)
次の移植周期に、黄体ホルモン剤服用開始を12時間遅らせ、移植する
Eさん Post-receptive 受容期後 着床に適さない(遅すぎ)  
検査結果 人数 結果
invalid RNA 8 0.5% 検体不良
Non-informatic 11 0.8% 判定不可
insufficient 0 0 検体量の不足

Reference:コウノトリ生殖医療センター ERA検査1422件のレポート
統計期間:2019.3月~2020.9月

 

当院の実績

2016年~2021年に当院でERA検査を受けた2467ケースのうち、35.79%の方は着床の窓がずれている(黄体ホルモン剤服用期間が120時間ではない)という結果でした。
ERA検査をせずに移植をする​と、着床に適さないタイミングで胚移植を行う可能性が約3割、つまり3人に1人は最適なタイミングで胚移植を行えないということになります。

 

検査費用

1600米ドル
*費用は当日の為替レートにより多少の変動があります。

 

よくある質問

ERA検査は、移植前に必ず行うべきですか?
ERA検査はオプション検査です。検査をご希望の方はお申し出下さい。
1回目の移植で妊娠に至らなかった場合は、2回目の移植前に医師より検査実施を提案する場合もあります。
ERA検査後、すぐに移植周期に入ることができますか?
生検(細胞の一部を採取)後、18営業日​(​約3週間) で検査結果が出ます。
通常、ERA検査の結果を確認してから移植周期へと進みますので、
最短で結果が出た次の生理周期に、移植周期に入ることができます。
EERA検査周期と移植周期の違いは何ですか?
ERA検査周期と移植周期は同じ薬を用い、同じスケジュールで行います。
移植周期は胚盤胞の移植を行いますが、ERA検査周期は細胞の採取を行い検査をします。
ERA検査結果に基づき移植し、第1子を出産しました。次の移植の前に再検査をしなければなりませんか?
検査を行なっているスペインのアイジェノミクスは、妊娠後は子宮内膜に変化が生じると言われていることから、再検査を勧めています。
いつ検査結果がわかりますか?
生検(細胞の一部採取)後、18日(約3週間)で検査結果が出ます。
ERA検査を日本で受けてもいいですか?何か注意点はありますか?
日本で受けていただいても問題ありません。
ERA検査は移植周期を模擬して行う検査で、ERA検査周期には移植周期と同様のお薬を服用する必要があります。
生理1日目に当院へご連絡いただき、当院医師の処方によるお薬の服用方法をご確認ください。
他院で行った検査結果は、コウノトリ生殖医療センターで移植する際も有効ですか?
他院での検査結果も有効です。
すでに検査済みの場合は、検査スケジュールとERA検査周期に服用したお薬の名前、服用量、服用方法をお知らせください。
当院でも同様のスケジュールにて、移植周期を進めます。
どのような時に、再度生検(細胞の一部を採取)が必要となりますか?
以下の場合、再度生検が必要となります。
 ①結果が「Pre-Receptive」で、2日以上の調整が必要な場合
 ②結果が「Post-Receptive」の場合