着床前スクリーニング検査(PGT-A/PGS)

着床前スクリーニング検査(PGT-A/PGS)とは、胚盤胞の染色体数を移植前に調べる検査です。コウノトリ生殖医療センターでは、最新の遺伝子検査システムであるNGS(次世代シークエンス技術)を用いて、染色体数の異常や部分欠失(≧10Mb)または不均衡型相互転座の検出を行います。
検査では、まず胚盤胞の一部の細胞を採取し(生検)、全ゲノム増幅(WGA)を通して分子生物学の技術で作成した「ライブラリー」の塩基配列をシーケンサーで解析します。NGS法は正常なサンプルと対照することで染色体の異数性を検出する技術で、従来のアレイCGH法に比べ、検査速度、診断精度、検出感度ともに優れています。
健康な胚盤胞を選別して移植することにより、着床率と妊娠率を向上させ、流産率も大幅に低下させることができます。

関連文章:PGT-A/PGS検査とは

 
 

対象となる方

・ ご夫婦のいずれか、もしくは両方に染色体異常がある
・ 35歳以上の女性
・ 2回以上の流産経験
・ 体外受精が繰り返し成功しないご夫婦
・ 親族の染色体異常、または均衡型相互転座の保因者
・ 男性不妊症

 

流れ

  • 医師とPGT-A/PGSについての相談やカウンセリングを行います。
  • PGT-A/PGSの適応症と検査リスクをご理解いただいた後、同意書にご記入いただきます。
  • 採卵手術または凍結卵子を融解して受精を行い、受精卵を5~7日間培養します。
  • 胚盤胞に到達次第、生検を行います。
  • 採取した細胞を送検し、PGT-A/PGS検査を実施します。(検査結果報告:2~3週間後)
  • 検査の結果、染色体数が正常な胚盤胞を選別して移植します。

 

PGT-A/PGS検査で検出できる疾患

・染色体の異数性:
ダウン症候群、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、エドワーズ症候群、パトウ症候群など。

・染色体の欠失(≧10 Mb):
猫鳴き症候群、プラダー・ウィリー症候群、22q11.2欠失症候群、アンジェルマン症候群など。

 

検査の限界

医学検査技術にはそれぞれの限界があります。
PGT-A/PGS検査は染色体の異数性を検出できる精度の高い検査ですが、単一遺伝子疾患(例:サラセミア、脊髄性筋委縮症、血友病など)、染色体の微小欠失(<10Mb)、均衡型転座や倍数体は検出できません。
妊娠後は、妊娠初期の新型出生前診断(NIPT)または妊娠中期の羊水検査の実施をお勧めします。

 

費用

検査費用は「生検」と「送検」の2つのステップに分けて算出され、胚盤胞1個あたりの総費用は804米ドルです。
・ステップ1「生検」:148米ドル/個
・ステップ2「送検」:656米ドル/個

PGT-A/PGS検査には4種類の検査方針があり、検査方針は受精の前に同意書へのご記入をもってご指定いただきます。

    メリット デメリット
生検:全て
送検:全て
・一回で全ての胚盤胞の結果を知ることができる ・得られる胚盤胞の数が予測できず、費用が高額となる可能性がある
生検:全て
送検:まず_個
・一回の費用が抑えられる
・送検した中に正常な胚盤胞があれば移植に進むことができる
・生検のみ行い送検していない胚盤胞も必要に応じいつでも検査できる(3年以内)
・送検した胚盤胞が全て異常だった場合、再送検の時間がかかる
生検:最大_個
送検:まず_個
・金額を確定できる ・胚盤胞の生検を追加で行う場合、融解・再凍結の費用が発生する(約1,181米ドル)
・融解・凍結を繰り返すことにより胚盤胞が傷つく可能性がある
予算に合わせて生検+送検

_個までの胚盤胞を生検するとした場合、生検はグレードの高い順ではなく、胚盤胞に到達した順に行われます。生検数が指定の個数に達した場合、その後に得られた胚盤胞は、グレードに関わらず生検の対象外となります。
また、栄養膜の評価がCグレードの胚盤胞の生検可否もお選びいただきます。

胚盤胞のグレードとは?

A・Bグレードに比べ栄養膜の細胞数が少ないCグレードの胚盤胞の生検には、着床率が5~10%下がるリスクがあります。一方、必ずBグレード以上の胚盤胞を得られるとは限らないため、Cグレードの胚盤胞の生検を行わないことを選択した場合、結果的に一つも検査を実施できない可能性があります。
検査方針は、双方のリスクと、ご自身の状況や医師のアドバイスを考慮された上でお選びください。

 

検査結果について

・正常:異数性が検出されず、移植可能な胚盤胞
・異常:異数性が検出された、移植できない胚盤胞
・モザイク:正常な細胞と異常な細胞が混在している胚盤胞

*モザイク胚の移植可否は、検査結果に基づき医師が判断いたします。

関連文章:モザイク胚の移植について

 

Q&A

生検、送検の個数はどのように決めたら良いですか?
生検:
40歳以上の方、または検査結果を確認した上で移植したい方は、全ての生検を行うことをお勧めします。
予算に上限がある場合は、予算に合わせてお決めいただくことも可能です。

送検:
卵子提供を受ける方、または30歳以下の方は2~3個、30~40歳の方は3~4個、40歳以上の方は4個以上を送検されることをお勧めします。採卵数が10個に満たない場合は、上記の個数もしくは全てを送検されることをお勧めします。
予算に上限がある場合は、予算に合わせてお決めいただくことも可能です。
PGT-A/PGS検査は誰でも検査できますか?
どなたでも得られた胚盤胞についてPGT-A/PGTS検査をお受けいただけますが、胚盤胞のグレードによっては検査をお勧めしない場合もあります。
栄養膜のグレードがCと判定された胚盤胞は、生検により着床率が下がる可能性があるため、検査の実施はお勧めしていません。
すでに胚盤胞を凍結保存しています。胚盤胞を解凍し、PGT-A/PGS検査することはできますか?
凍結胚盤胞を融解し、PGT-A/PGS検査を行うことは可能です。
ただし、胚盤胞を一度融解し再凍結することとなるため、融解と凍結の費用が発生します。また、融解と凍結の繰り返しには胚盤胞へダメージを与えるリスクが生じます。
性別は分かりますか?
技術的には判別が可能ですが、台湾の人工生殖法により性別の選別は禁止されているため、検査報告書には性別の記載はありません。
異常と判断された胚盤胞やモザイク胚盤胞は移植できますか?
異常と判断された胚盤胞は移植できません。
モザイクと判断された胚盤胞の移植可否は、検査結果に基づき医師が判断いたします。


モザイク胚の移植について
妊娠した場合、羊水検査をした方が良いですか?
PGT-A/PGS検査は精度の高い検査ですが、妊娠後は新型出生前診断(NIPT)の実施をお勧めします。
NIPTの検査結果が陽性の場合、診断を確定させるためには羊水検査を行う必要があります。