失敗の原因を探しだすことが大切

体外受精の成功率はどれくらいでしょうか?成功率に影響する要因は年齢、卵子の在庫量、子宮の構造、精子の状態や免疫の反応など様々あります。移植の失敗に直面する可能性がありますが、失敗に直面したときに最も重要 なのは、その原因を見つけ、次回の成功率を高めることです。     

2024-08-06

失敗の原因を探しだすことが大切

診察室でよく聞かれる質問のひとつ、「体外受精の成功率はどれくらいですか?」。

成功率に影響する要因は、年齢、卵子の在庫量、子宮の構造、精子の状況や自己免疫反応など様々あります。
データに基づいた回答としては、「染色体が正常な胚を1つ移植した場合、妊娠率は約70%に達します」。というもので、100%ではありません。海外の非不妊患者(精子提供や卵子提供による代理出産)におけるデータでも、妊娠率は80~90%に達することがありますが、それでも100%ではありません。そのため、移植の失敗に直面する可能性があります。失敗に直面したときに最も重要 なのは、その原因を見つけ、次回の成功率を高めることです。     

移植 失敗の原因は、胚の要因、構造的要因、ホルモンの要因、そして免疫や血栓に関する要因に分類できます。

  • 胚盤胞の要因:移植失敗の主な原因として、胚の染色体異常が挙げられます。胚盤胞における染色体正常率を年齢別に見ると、34歳以下では約60%、35~39歳では約40~50%、40~42歳では約20%、43歳以上ではわずか8%に過ぎません。胚移植前の着床前スクリーニング検査(PGT-A/PGS)は、正常な胚を選び出すための方法ですが、この検査には注意が必要です。検査のためには胚の生検(検査のために少量の細胞を切り取る)が必要ですが、この生検が胚の着床能力に影響を与える可能性があるため、細胞数が少ない胚には適していません。また、夫婦のどちらかに染色体異常がある場合、胚の染色体異常率が大幅に増加します。
    〇 関連検査:PGT-A/PGS検査、夫婦の染色体検査 
     
  • 構造の要因:ポリープや癒着、子宮を圧迫するような筋腫など、子宮腔内の異常は胚の着床の妨げになります。また卵管の癒着が原因で水腫が生じると、着床率が減少します。
    〇 関連検査:子宮鏡・卵管造影検査
     
  • ホルモンの要因:移植前、内膜の厚さが一定の基準に達した後、黄体ホルモンを補充することで内膜は胚を迎える状態になります。しかし、黄体ホルモンの吸収は個人によって異なるため、適切な移植のタイミングを調べることが重要です。ERA検査(Endometrial Receptivity Analysis、ERA)は、現在これを調べることができる検査の一つです。また甲状腺も妊娠の結果に影響を与える重要なホルモンです。甲状腺自己免疫抗体を持つ女性は、妊娠初期に甲状腺機能低下が生じ、妊娠の結果に影響を与える可能性があります。
    〇 関連検査:ERA(子宮内膜着床能機能)検査、甲状腺自己抗体
     
  • 免疫・血栓の要因:多くの場合、構造的な問題を適切に処理し、ホルモンをうまくコントロールし、正常な胚を移植すれば成功することができます。しかし、不妊に悩む人々の約10%は、血栓や過剰な免疫反応の問題を抱えており、例えば抗リン脂質症候群に関連する抗体を持っている場合や、プロテインSの数値が低い場合は血栓のリスクが高まり、移植後の胚の成長に影響を与える可能性があります。免疫反応の有無に関しては、移植前後に段階的に数値を測定し、妊娠の結果から過剰な免疫反応があったかどうかを確認することができます。
    〇 関連検査:自己免疫検査、移植前後のハイレベル免疫検査
     

移植失敗となった場合、それは妊娠に影響を与えるいくつかの要因がまだ解決されていないことを意味します。失敗から原因を見つけ出し、調整することがとても重要であり、それによって次回の成功の可能性が高まります。

*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。