体外受精治療における8つのリスク
体外受精で最も辛いことは何でしょう? 若く卵子量が豊富な方の治療はスムーズに行われ、採卵手術を1・2回行えば子供を授かるチャンスに恵まれるでしょう。しかし年齢が38歳以上、又は卵子の在庫量が少ない方の治療は、そうはいきません。
2016-03-21
体外受精で最も辛いことは何でしょう?
若く卵子量が豊富な方の治療はスムーズに行われ、採卵手術を1・2回行えば子供を授かるチャンスに恵まれるでしょう。しかし年齢が38歳以上、又は卵子の在庫量が少ない方の治療は、そうはいきません。
38歳以上、またはAMHが2以下の場合「卵子の品質」は不安定と考えられるため、体外受精の治療において、以下の8つのリスクが生じます。
そのリスクと予防の手立てなど治療前に十分に理解し、心の負担を軽くしましょう。
反応不良 |
生理周期1~3日目には超音波検査で5個の小さな卵胞を確認できたにもかかわらず、排卵誘発後は4個またはそれ以下となるなど。 |
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早発排卵 |
通常、排卵促進剤を注射してから36~40時間後に排卵しますが、卵胞の破裂が早まり排卵日に採卵できないことがあります。 |
空胞 |
本来、それぞれの卵胞には1つの卵子がありますが、卵胞内に卵子が存在しないことがあります。(空砲) |
卵子の質の低下 | 35歳以下の卵子の良好率は70%に達しますが、40歳以上は50%に満たず、さらには形態不良のため使用できないことがあります。 |
受精率の低下 |
一般の受精率は70%ですが、70%を大きく下回る、または受精できないことがあります。 |
異常受精 |
受精卵に前核が3つできるなど異常受精がおこることがあります。 |
受精卵分裂異常 |
95%の受精卵は自然に分裂しますが、分裂しないこともあり、その場合は培養は中止となります。 |
分裂中止 |
正常な胚は15~17時間ごとに一度分裂し、3日間の培養で通常6~8細胞になりますが、途中で分割が止まり「移植」または「凍結」が可能な胚盤胞に達しないことがあります。 |
この8個の問題についてどのように予防すればよいでしょうか?
反応不良 |
年齢と卵子の在庫量に基づいた「オーダーメイドの治療」を組み立て、中刺激・低刺激・自然周期・二段階採卵などの方法を採用することで、自身により合った治療を行うことができます。卵子の自然淘汰は、高刺激により質の良くない卵子を無理やり排卵させることに比べれば、決して悪いことではありません。 |
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早発排卵 |
卵胞の年齢が異なれば排卵促進剤を打つタイミングも異なります。 |
空胞 |
排卵促進剤を打ったにもかかわらず採卵できなかった場合、実際に卵子がなかった可能性と、排卵促進剤をきちんと打てていない、あるいは打つ時間が正しくなかった可能性があります。 |
卵子の質の低下 |
採卵後、すぐに顕微鏡で形態が正常かどうかを確認します。 |
受精率の低下 |
受精率の低さは受精卵の質と関係があります。卵子の質と年齢は負の相関関係にあり改善することはできませんが、超高倍率の顕微鏡で精子を6300倍に拡大し(IMSI)、形態が正常で空胞のない精子を選別することで、改善を期待することができます。 |
異常受精 |
卵子が少ない場合、顕微授精により受精を行います。 |
受精卵分裂異常 |
原因は卵子の質によるもので、予防をすることが困難です。さらに採卵手術を重ね、より多くの良好な卵子を収集する必要があります(卵子収集法)。 |
分裂停止 |
胚が培養の過程で日々淘汰される中、良好胚は分裂を続ける確率が高いとされます。質の良くない胚は3~4日目で分裂停止となり、予防をすることは困難です。より良好な胚盤胞を収集する必要があります(胚盤胞収集法)。 |
いつ卵子提供を受けることを考えるべきですか?
年齢のために卵子の品質・量が理想的でない場合は、治療開始直後から心理的なプレッシャーを感じるかと思います。
診察の度に不確かな状況に遭い、ホラー映画のような恐怖や不安、怒りの中で生活しているような気持ちになることでしょう。
もちろん自己卵子が一番という想いがあると思いますが、どれほどチャレンジすれば不妊治療を終えることができるのでしょうか?
43歳で採卵移植した場合の出産率は僅か3.5%で、赤ちゃん授かるには平均で120個の卵子が必要となることを知ったとしても、もう一度頑張る気持ちはありますか?まさにこのような時が、卵子提供を考慮するべき時です。以下の状況は、卵子提供へ転換するタイミングといえるでしょう。
- 43歳以上
- 連続3回、空砲だった
- 連続3回、使用する卵子を得られなかった
- 連続3回、移植・凍結できる胚を得られなかった
*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。