クラインフェルター症候群を受け入れ、精子提供へ 幸せは次の駅

2週間待った夫の検査結果は、夫が「クラインフェルター症候群 (KLINEFELTER SYNDROME)である」という受け入れがたい事実でした。生まれつき正常男性よりX染色体が1本多く、先天性無精子症であると診断された香港の方の体験談です。

2018-11-02

クラインフェルター症候群を受け入れ、精子提供へ 幸せは次の駅

結婚して4年あまり、積極的な「妊活」はしていませんでしたが、あえて避妊をすることもなく、生理は毎月規則的にありました。ある日突然、どこか体に異常があるため妊娠検査薬の2本の線が見られないのでは?と思い始め、子どもが大好きな私たちはようやく焦りだし、不妊専門の医師の元で一度詳しい検査をすることを決めました。2週間待った夫の検査結果は、夫が「クラインフェルター症候群 (Klinefelter syndrome)である」という受け入れがたい事実でした。生まれつき正常男性よりX染色体が1本多く、先天性無精子症であると診断されたのです。医師は精巣上体精子回収術(MESA)を行ったとしても得られる精子は10分の1に満たないと説明し、私たちに3つの選択肢を提案しました。
(1) 養子をもらう 
(2) 精子提供を受ける。但し香港では精子ドナーは普及しておらず、国外から探す必要があるため、一般的に何年も待たなければならない
(3) 生涯子どもを持たないことを受け入れる
この結果を聞いた後、夫婦で一緒にどれほど泣いたかわかりません。泣きながらもずっと残酷な事実から逃げ、やがて涙も枯れた私はある日、夫にこう言いました。
「私たちは子どもが好きだけど、精子提供はあなたにとって受け入れがたいものでしょう。それに何年も待たないといけないし、いい人に出会えたとしても、私が出産する頃はもう若くない。だから養子をもらいましょう!子どもを持つことが叶わない夫婦と、両親に見捨てられてしまった子どもが出会えたら、それも一つの縁だと思うの。私たちがその子を愛してあげましょうよ!」
夫は淡々と「そうだね!」と答え、その後私はずっと養子に関する情報を探し続けました。

ある日突然、夫から転送メールが届き、何だろうと思いながら開けてみると、それは精子提供の登録書でした。夫自らコウノトリ生殖医療センターのコンサルタントと連絡を取り、資料を送ってもらっていたのです。夫が幸せのために考え抜いて選択したと知り、私は涙が止まりませんでした。
夫は私にこう言いました。「ネットでコウノトリは、多くの不妊治療夫婦にとって最後の砦だということを知ったんだ。成功例も多いし、一番重要なのはドナーを厳しく選んでいることと、待ち時間もあまり長くないこと。この道を選ぶと決めたからにはベストな選択をしようよ。」
こうして夫の大きな愛をきっかけにコウノトリを知ることとなり、香港から台湾への子どもを求める治療のため、私はコンサルタントと密な連絡を取り始めました。特にコンサルタントのBryanにはとても感謝しています。彼はどんな疑問にも真摯に答えてくれましたし、渡台前に必要な検査や書類の準備についても不備がないよう確認してくれ、また治療過程においても大変お世話になりました。台湾への渡航直前、ちょうど台風が直撃した際には、気を付けてねと香港まで電話をくれたことには感激しました。
コンサルタントと連絡を取り始めてから約2か月、やっと全ての検査と書類を完成させ、台湾に行く準備が整った頃、主治医はW医師であるとの連絡を受けました。
渡航前にネットでW医師に関することを調べると、W医師は笑顔の素敵な医師で体外受精の成功率も高く、私は安心し出発することができました。

初めて訪れたコウノトリ生殖医療センターは、他のクリニックのような冷たい感じはせず温かみがあり、診察に来たとは感じられませんでした!担当のコンサルタントは私の状況をしっかり把握しており、治療のすべての行程で広東語がわかるコンサルタントが付き添い、通訳を行ってくれました。彼らの細やかなサポートのおかげで不安だった検査もリラックスして終えることができたのです。
主治医のW医師との初めての診察では、まず医師の優しい笑顔で私の緊張がほぐれ、さらに「香港に健康なお子様を連れて帰れるよう最善を尽くします」との言葉を聞き、W医師を信頼することができました。
こうして私と夫は、注射薬と「希望」を持って香港に戻りました。

専門スタッフが公証手続きに付き添い、ホテルまでのタクシー手配をしてくれるなど、コウノトリ生殖医療センターのサポートは素晴らしく、当センターを選んだことは最善の選択であったと思いました。そして香港に戻ってから2週間ほどが経った頃、コンサルタントから電話があり、すべての書類の準備が完了したこと、そしてドナー候補が見つかったとの連絡を受けました。コウノトリが私たち夫婦に最適なドナーを探してくれたと信じていたため、敢えてドナーに関する詳細な情報を聞くこともなくすぐに同意し、コウノトリでの本格的な治療がスタートすることとなりました。

初診から間もなく2度目にコウノトリを訪れた際も、前回と同じ温かみを感じながら、採卵前の全ての検査と準備を終えました。ただ治療過程では、卵胞の数が予測よりも少なく、また卵胞の発育も緩やかで、採血検査の結果、注射薬の追加が必要となったり手術日を繰り返し延期するなど、想像していた順調なものではなかったため、とても落ち込み半ば諦めた気持ちで涙を流すこともありましたが、コンサルタント、そしてW医師とスタッフからの励ましを得て、無事に採卵手術を終えることができました。そして今回もW医師の前向きな表情で私は「希望」を胸に香港へと戻りました。

待ちに待った移植周期を迎えましたが、採血の検査結果は理想どおりではなく、移植はキャンセルとなってしまいました。とても落胆しましたが、コンサルタントは私の質問に答えるだけでなく、大変だったでしょう、落ち込まないでと励ましてくれました。
そしてその1か月後、体も心も準備が整い3度目のコウノトリを訪れることになりました。移植を待つ際や移植を行う手術室の環境も快適で、優しい雰囲気の中、リラックスすることができ、移植はとても順調で、あっという間に終わりました。そして移植が終わるとスタッフの皆さんが成功を祈ってくれたり、胚盤胞の写真をプレゼントしてくれ、私たち夫婦はとても感激しました。最後にベッドから降りると昼食が運ばれ、移植後の注意事項を丁寧に説明を受けました。このように僅か半年間の治療を終え、翌朝夫と香港に戻りました。


香港に戻り2週間が経った妊娠判定日、初めて2本線を目にした時は自分の目が信じられず、採血検査結果で確認した後、ようやく少し実感が沸いてきました。
しかしこの喜びは長くは続きませんでした。妊娠確認をした4日後に鮮血の出血があり入院することになったからです。パニックになりメールでコンサルタントに連絡すると、すぐに電話があり励ましてくれました。泣き出し、まだ希望はある?なんて質問には「最後まで勇気を持って、赤ちゃんを心から信じてください!」と私が望んでいた言葉をかけてくれたのです。
退院2週間後の2回目の妊婦検診では、赤ちゃんは力強い心拍を聞かせてくれました。それは私が今まで聞いた中で一番感激的な音でした。

コウノトリ生殖医療センタースタッフの皆さんに感謝しています。全ての治療過程で、どんな状況でも付き添ってくれたことに感謝しています。皆さんのおかげで今日の幸せがあります。32歳の誕生日を迎える年に、最高のプレゼントをありがとうございました。このプレゼントを心から大切にします。
いま不妊治療を頑張っている皆さんへ
困難な道で、怖気づいたり落胆することや苦しみでいっぱいになることもあると思いますが、自分を信じ前へ進んで下さい。険しい道の先には、きっと明るい光が待っています!
不妊治療の道を歩まれている方々に心から伝えたいことは、子どもを持つ夢を諦めず、医師・そしてコウノトリを信じてくださいということです。きっと皆さんに寄り添ってくれます。子どもを持つことは遠い夢ではなくなるでしょう!
皆さんの妊娠成功、そしてコウノトリを卒業して可愛い天使が早くやってくるよう祈っています。


コメント

1.当院が精子バンクを設立してから現在、待たない精子提供という目標をすでに達成し、台湾における精子提供治療の1/3が当院で行われています。染色体検査や精液分析を含んだ健康診断など、ドナーは厳格な基準で評価され、その年間平均登録率は僅か10%ほどです。

2.台湾と香港、海を越えた「縁」は、ご主人さまからいただいた一通のメールから始まりました。この治療過程でのメールは返信を含め250通を超えています。遠い香港からお越しの彼女たちの中国語は決して流暢ではなく、うまく意思疎通ができないのではないかと心配していましたが、排卵促進剤の注射を打つ時や移植など、ご来院の度に付き添い、行動で示すことでその不安を解消することができたので、治療全体を通し、言語による壁は特に感じませんでした。現在は彼女たちの励ましもあり、一生懸命「広東語」の勉強をしています。次回赤ちゃんを連れて来院される時には流暢に話せるようになれればと思います。

3.彼女の AMHは5.73で、予測される採卵個数はとても理想的なものでしたが、注射剤の反応は予測とは異なるものでした。しかし彼女は常に前向きでプラス思考な持ち主だったので、そんな彼女の考えが妊娠成功につながったのではと思っています。以下は彼女の採卵と治療過程をまとめた表です。
健康な赤ちゃんが無事生まれますよう祈っています。当院では3個の良好胚をお預かりしているので、今後、第二子をお迎えいただけます。
*現在、すでに元気な赤ちゃんをご出産されました。


 

*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。