黄体ホルモンの役割
黄体ホルモン(プロゲステロン)が生殖医療においてどのような役割を果たすかを理解する前に、まず黄体ホルモンがどのように作られるのか、そしてその機能が何であるかを知る必要があります。
2023-12-05
自然排卵周期では、排卵後の顆粒膜細胞が黄体を形成し、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。黄体ホルモンは子宮内膜を安定させ、胚胎が着床しやすい環境を整え、胚の着床を待ちます。もし着床・妊娠が成立した場合、着床部位が分泌するヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が黄体を維持させ、黄体ホルモンを分泌し続けて内膜を安定させます。妊娠が成功しなかった場合、黄体は萎縮し、黄体ホルモンが減少することで内膜が剥がれ、次の月経が始まります。
黄体ホルモン(プロゲステロン)の生殖における役割は主に二つです。
- 子宮内膜を胚が着床できる状態に変化させること
- 内膜を安定させ、妊娠が継続できるようにすること
妊娠初期において、子宮内膜の安定は黄体から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)によって維持されます。妊娠が進むにつれて胎盤が次第に形成され、内膜の安定を保つ役割が胎盤に移行していきます。そのため、黄体は次第に萎縮します。この移行の時期はおおよそ妊娠6〜8週にあたりますが、この移行過程に伴うホルモンの変動が内膜の不安定を引き起こす可能性があります。そのため妊娠初期は出血しやすい時期とされ、それに対処するためには黄体ホルモンの補充を行い、内膜の安定性を高めます。
体外受精の移植では、まずエストロゲンを使用して内膜を育て、厚くしていきます。そして内膜が十分な厚さに達した後、黄体ホルモン(プロゲステロン)の補充を開始します。前述の通り、ここで黄体ホルモンを用いて、内膜を胚胎が着床できる状態に変化させるのです。その後、黄体ホルモンは内膜を安定させるために引き続き使用され、妊娠の有無が確認されるまで続けられます。妊娠が順調に進んだ場合、ホルモン補充はおおよそ7週目、安定した心拍が確認できるまで続けられます。その後、胎児の発育状況に応じて、薬剤の使用量を段階的に減少させていきます。
黄体ホルモンの補充法には、内服、膣座薬、注射などさまざまあります。個人の状況に応じて、医師が投与法や用量を調整するので、どの補充法が優れているというわけではありません。黄体ホルモンを補充している期間、用量が多いために、眠気、頭痛、または吐き気などの症状が出ることがあります。
十分な黄体ホルモンは妊娠初期にとても重要です。特に体外受精治療を受ける際、移植周期が人工周期である場合、その周期のホルモン(エストロゲンと黄体ホルモンを含む)はすべて外部の薬物によって補充されます。そのため、必ず指示にそった薬を使用し、自己判断で薬の用量を減らさないことが重要です。
*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。