卵子提供で懐妊へ

43歳を過ぎ、「免疫・血栓」に問題を抱えていながらも「自己卵子で頑張る」方は、AMHの数値が2以上でない限り、残念ながら何百万を費やしても、期待する結果が得られるのは、神社のおみくじで大吉を引き当てる確率の、10分の1にも満たしません。

2024-04-26

卵子提供で懐妊へ

年齢は43を過ぎ、不妊治療も6年が経過、そして流産6回。「ママになりたい」その一心で治療を重ねても妊娠に至らない時、皆さんは卵子提供を受け入れることはできますか?
反復着床不全・習慣性流産特別診察では、年齢が43を過ぎ、「免疫や血栓に問題」を抱えながらも、自己卵子での治療を希望される方が多くいらっしゃいます。こうした方たちの成功率はどれくらいでしょうか。
 

44歳、卵子提供を受け2回の移植で成功


iVie51号の表紙に登場したのは、香港からお越しの患者さま(以下、通称:コウイカママ)で、目的はもちろん子供を授かりたいというものでした。44歳のこの方は、自身の卵子の質が優れないと知っていたため、卵子提供を受けることを決めました。正確な移植のタイミング(ERA131時間)に基づき、「良好胚」(培養5日目/5AA/染色体正常)を移植しましたが、結果は残念なことに陰性。原因は一体何だったのでしょう?
プロゲステロン値が低すぎた事が分かり、服用量を調整した「2回目の移植」では培養5日目/5ABの胚盤胞を移植、無事に当院を卒業されました。

正確なタイミング(ERA)で、見た目も中身も優れた(PGT-A/PGS)良好胚を移植する治療プランは、当院で「IVF3.0+」と呼ばれる、個人に合わせた体外受精治療法です。科学的根拠に基づいた治療法を行ったにもかかわらず、陰性の結果となるのはなぜでしょうか。
 

科学を信じ、原因を探し出す


物事には必ず原因があります。2023年の当院の統計では、「IVF3.0+」による初めての移植で、浅い着床や枯死卵という結果になった症例は54ケースありました。驚いたことに、血栓問題による割合が一番多く35%、免疫が17%、胚の損傷が18%、ハッチング障害が13%という結果で、コウイカママのような「プロゲステロン値の低下」によるものは僅か1例、ERA検査結果に誤差があったケースが1例、そして7例が原因不明というものでした。

コウイカママは「1回目の移植」後、2度鮮血の出血がありました。これはプロゲステロン値の低下によるもので、最も対処の容易い症状でしたが、非常に残念なことに、当時彼女は香港に滞在中だったため、即時の診断と処置を行うことができませんでした。プロゲステロン値低下の原因は、その吸収不良や代謝が活発すぎることが考えられ、このような状況を避けるために、医師は「内服タイプの黄体ホルモン剤+クリノン(膣座薬タイプ)」もしくは「内服タイプの黄体ホルモン剤+黄体ホルモン注射剤」の「二通り」の処方を行います。
「移植から心拍確認」までの間に起こる出血の主な原因は次の5つです:エストロゲン値・プロゲステロン値が低すぎる、免疫によるもの、血栓の値が高すぎる・低すぎる。
当院ではまず採血検査を行い原因を明らかにし、それに応じた治療を行っており、むやみに抗血栓注射剤を投与し出血を招くようなことはしません。時に投与量が十分でないと返って出血を起こすこともある、これは当院が十数年にわたり、累計数千の反復着床不全や習慣性流産を診察してきた経験から分かったことです。

偶然にも免疫科の「血栓参考値」は大人にしか当てはまらず、「生殖医学」においては更に厳しい基準値を参考にするべきということが分かった

残念なことに、今現在に至るまでどの医学チームからも、これを実証した関連の論文発表はありません。
 

スーパーママ、公式を超えた成功例


診察室で使用しているiPadの電子ガイダンスには「スーパーママ」、「不屈のスーパーウーマン」を紹介しているページがあります。そこでは従来の治療の公式(SOP)では成功に至らず、中には10年にも及ぶ治療の末、卵子提供の「3度目のマッチング」を行い、54歳にしてわが子を抱くという願いが叶った方など、個人の状況に合わせ、またこれまでのSOPを逸脱しなかったら、ママになることはできなかった困難な症例の中から、さらに困難を極めた「桁違いの」5名を紹介しています。
初診時に43歳を過ぎている場合、当院では次の3つのプランを提案します:自己卵子による治療は6ヶ月間を目途とする、すぐに卵子提供を受ける、もしくは「混合プラン」を行う。「混合プラン」とは「四親等表」の審査を待っている間、自己卵子による最後の治療に挑戦するものです。最後にもう少し頑張ることで、悔いは残りにくく、その3~4ヶ月の間に気持ちも固まります。ただ、もし免疫や血栓に問題を抱えている場合は、迷わず「すぐに卵子提供」治療を勧めます。なぜなら苦労して得た胚盤胞が、免疫や血栓による攻撃を受けてしまい、それまでの苦労が水の泡になる確率が非常に高いからです。

43歳を過ぎ、「免疫・血栓」に問題を抱えていながらも「自己卵子で頑張る」方は、AMHの数値が2以上でない限り、残念ながら何百万を費やしても、期待する結果が得られるのは、神社のおみくじで大吉を引き当てる確率の、10分の1にも満たしません。

コメント:
1.当院での卵子提供治療の結果

凍結卵子 融解後生存卵子 正常受精 胚盤胞
19個 19個 13個 11個

2.2回の移植の結果は以下の通りです

移植 1回目 2回目
PGT-A/PGS 正常胚1個 正常胚1個
ERA 131時間 131時間
結果 浅い着床 女の子

*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。