培養3日目と5日目の胚移植、どちらを選ぶ?
培養3日目、5日目の胚移植にはどんな違いがあり、どちらを選べばよいのでしょう。
2022-09-27
胚移植は培養3日目を選ぶ?それとも培養5日目?
この質問に答える前に、まず胚の発育と過程についてご紹介します。
採卵日を0日目とし、この日に卵子と精子の受精を行います。受精1日目には受精に成功したかが確認でき、その後受精卵は細胞分裂を始め、受精卵、4分割胚、8分割胚と次々分割を繰り返します。3日目は初期胚と呼ばれ、この頃の胚は細胞の数や、その細胞の大きさが均等か、またフラグメントの数により評価されます。受精後4日目には桑実胚となり、分裂した細胞動同士がくっつき一つの塊の状態になります。そして5日目から7日目には細胞の塊が分かれ胚盤胞(Blastocyst)へと達します。
胚盤胞の外観は主に2つに分けられます。1つは周りを囲んでいる部分で、妊娠後に胎盤となる栄養膜細胞(Trophectoderm)と呼ばれ、もう1つは、後に赤ちゃんとなる内側にある細胞、内細胞塊と呼ばれます。
このように、3日目から5日目の間に胚は大きく変化します。
受精後3日目までの成長と比べると、状態の優れない胚は栄養膜と内細胞塊に分かれる段階で成長がストップしてしまい、胚盤胞に達しないことが多くみられます。 このように分割期である3日目と、5日目の胚盤胞には差があることが分かります。
胚盤胞のメリット
・初期のスクリーニング:胚盤胞に達したということは、3日目から5日目の成長の関門をクリアしということ
・同じ個数移植した場合、3日目の胚に比べると、初期のスクリーニングを既に通過しているため妊娠率が高くなる
・多胎児のリスク低減:3日目の胚にくらべ胚盤胞の妊娠率は高くなる。
予測できる妊娠率で考えるとすると、同じ成功率でも移植に必要な胚の数は少なくて済む
・着床前スクリーニングの検査が可能:胚盤胞は栄養膜細胞の一部を採取し、PGT-A/PGS検査が可能になる
胚盤胞のデメリット
・移植可能な胚を得られない可能性:移植前の培養の過程で全て淘汰され、胚盤胞まで成長できない
以上の差を知れば、どちらを選べば良いかお分かりだと思います。
胚盤胞を移植するのに適している方
・胚の数が多く、胚盤胞まで培養することで初期のスクリーニングを行いたい方
・一度の移植妊娠率を高めたい、多胎児のリスクを避けたい方
・着床前スクリーニング(PGT-A/PGS)検査を行う方
初期胚の胚移植が適している方
・移植のチャンスがない可能性を受け入れられない方
・体外受精を何度か試みても胚盤胞まで到達しないため、初期胚を移植し体内で成長するか試したい方。
このような場合は複数個の初期胚を移植することもあり、最終的な結果は妊娠検査での判断となります。
胚盤胞まで達するかは、胚の質(個人による)や培養室の培養技術(自身以外の要素)など様々な要因が胚盤胞への培養率に影響します。つまり卵子・精子、そして培養室の受精技術から培養に至るまでの環境全てが、胚盤胞到達率に影響するのです。
初期胚・胚盤胞の移植はそれぞれのメリットデメリットがあるので、ご自身の状況・考えをなど、医師と最適な移植プランをご相談いただけます。 (卵子提供・精子提供では胚盤胞まで培養し、移植を行っています)
*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。