移植前の検査(4):自己免疫

自身の身体を守る免疫機能ですが、時には不妊の原因となることがあります。胚移植の前に検査を行い、不妊の原因となりうる免疫機能が働いていないかを確認します。

2021-03-04

著者 コウノトリ生殖医療センター

移植前の検査(4):自己免疫

 移植前に実施する検査:自己免疫機能

一般的に免疫機能とは異物に対して人体が備えている防衛機能で、体内に侵入したウィルスや細菌などを攻撃して身体を守ってくれます。
しかし免疫機能が正常に働かなかった場合、胚盤胞を外から侵入した異物として認識・攻撃してしまい、着床率の低下や流産率の上昇を招いてしまいます。
これらの免疫系の異常については、採血検査により調べることができます。

検査時期 :いつでも可

免疫機能の検査は採血検査により行われます。子宮鏡など他の不妊検査と異なり生理の影響は受けないため、いつでも検査が可能です。
しかし異常が発見された場合、免疫機能の治療には数か月が必要となるため、なるべく早い時期に検査を受けることをお勧めいたします。

検査項目は以下となります。

 

免疫検査項目

日本語の名前

Anti-β2-Glycoprotein-IgG

抗β2-グリコプロテイン-IgG

Anti-β2-Glycoprotein-IgM

抗β2-グリコプロテイン-IgM

Cardiolipin IgG

抗CL抗体 Ig-G

Cardiolipin IgM

抗CL抗体 Ig-M



 

Anti-ENA


 

Anti-RNP



 

抗ENA抗体



 

Anti-Smith

Anti-SSA(Anti-Ro)

Anti-SSB(Anti-La)

Anti-Scl-70

Anti-Jo-1

Anti-TPO Ab

抗TPO抗体

Anti-Thyroglobulin:ATA

抗サイログロブリン抗体

Lupus anticoagulant

ループスアンチコアグラント

Protein S

プロテインS(活性)


各検査で分かる症状や疾病 :

抗TPO抗体は活性酵素を抑制し間接的に甲状腺ホルモンの合成を抑制します。
これにより甲状腺機能の減退を招きます。
高濃度の抗TPO抗体とTSHの値の上昇から甲状腺機能の低下の予測と橋本病の診断が可能です。
 
抗ATA抗体が一旦体内で産まれると、甲状腺の製造と正常性に影響を及ぼします。
多くの橋本病と自発性甲状腺機能低下、そして一部のバセドウ病では血中のATAが上昇します。
抗ENA抗体が陽性となった際に良く見られる症状は、SLE(全身性エリテマトーデス)、SSc(全身性強皮症)、RA(関節リウマチ)などです。
 
抗β2-グリコプロテイン- IgG、抗CL抗体 Ig-Mと抗CL抗体 Ig-Gの影響で起きる典型的な症状は習慣性流産です。
また、45歳より若い年齢での血栓発生による脳卒中や心筋梗塞、血小板の減少があります。

ループスアンチコアグラントによる影響は原因不明の血栓の発生、習慣性流産、全身性エリテマトーデスがあります。

検査により異常が疑われた際は、免疫系の専門医で詳しく検査をすることをおすすめします。
免疫系疾病の大部分は投薬によりコントロールが可能となり、
服用し症状をコントロールをすることで妊娠の達成、また流産のリスクを下げることも可能となります。

妊娠の達成には、気持ちを整え穏やかに規則正しい生活をすることも免疫機能を改善する一つの方法です。

*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。