卵子の在庫量が少なくても大丈夫 3つのステップで早めの準備

診察を行っていると一見健康で若い女性の方でも、思いがけず AMH が低めであるケースに時折遭遇します。 AMH が低いということは、卵子の数がやや少ないことを示しているにすぎず、「卵子がない」「更年期である」という意味ではありません。また、正常に排卵しているかどうかとも直接関係せず、妊娠できないということでもありません。 大切なのは、少し早めに将来の妊娠について考え、適切に生殖計画を立てていくことです。

2024-04-02

卵子の在庫量が少なくても大丈夫 3つのステップで早めの準備

卵子の在庫量が少ないとわかったら、どうすればいいのでしょうか?


卵子の在庫量を知るには、AMH(Anti-Mullerian Hormone/抗ミュラー管ホルモン)の血液検査を行なうことで卵巣機能を測定することが一般的です。妊娠適齢期の女性では、AMH値は2~3以上、あるいはそれ以上の値であることも多くあります。しかし診察室では一見健康で若い女性の方でも、思いがけずAMHが低めであるケースに時折遭遇します。

まずお伝えしたいのは、必要以上に心配しないでくださいということです。AMHが低いということは、卵子の数が少し少ないという意味にすぎず、「卵子がない」「更年期である」ということではありません。また、正常に排卵しているかどうかとも直結せず、「妊娠できない」という意味でもありません。ただし、卵子の在庫量について知ることができた以上、将来の妊娠について早めに考えたり、改めて家族計画を立てたりすることがより大切になります。
 

AMH(ng/ml) >6 4 3 2 1
卵巣年齢 <25歳 35歳 38歳 40歳 >43歳

 

自分自身の出産・育児について考えてみる


出産し子供を育むというを選択を希望しない場合、更年期が早まる可能性があるかどうか注意する必要があります。一般的に女性の更年期は50歳前後ですが、もし更年期が早く始まる場合には、骨粗鬆症や心血管疾患などのリスクを軽減するため、適切なホルモン補充が必要になる場合があります。
 

出産育児を希望する場合は、前もって計画を進める


AMHが低いからといって自然妊娠の可能性がなくなるわけではありません。排卵がある限り、自然妊娠のチャンスはあります。しかし複数回試みても妊娠に至らない場合は積極的に検査を受け、妊娠を妨げている原因がないかどうかを早めに確認することをおすすめします。

卵子の在庫量が少ない女性が体外受精を行う際、一度に採卵できる卵子は少なく、胚盤胞を集めるまでにより多くの時間と忍耐が必要になることがあります。ただし、得られた胚の染色体の正常率は、同年代の女性と大きな差があるわけではありません。
 

【実例】卵巣機能不全でも成功したケース

34歳のAさんは、自然妊娠を半年ほど試みた後に来院されました。持参された半年前のAMHの数値を見ると0.25、当院での再検査では 0.01 未満まで低下し、FSH は26と高い値で(一般的にFSH<8が正常、FSH>12は卵巣機能の大きな低下を示します)、治療開始時には刺激しても卵胞が成長しない、典型的な卵巣機能不全の状態でした。

その後、自然周期や低刺激法を組み合わせ、短期間に4 回採卵を行い、合計8個の卵子から5個の胚盤胞を得ることができました。そして2回目の移植で、PGT-A/PGS(着床前スクリーニング検査)未実施の胚を移植したところ、無事に妊娠・卒業されたのです。このようなドラマのような展開が実際に起こります。問題に向き合い、適切な方向へ努力を続ければ、妊娠できる可能性は十分にあるのです。
 

AMH FSH 採卵回数 成熟卵子 良好胚 移植回数
<0.01 26 4回

8個

5個 2回

 

生殖計画を先延ばしにする場合は卵子凍結を選択肢に
 

卵子の在庫量が少ないことを理由に、結婚や出産のタイミングを急いで決めたくない場合や、仕事など今はまだ他に優先することがある場合、卵子凍結は選択肢の一つとなるでしょう。もちろん卵子凍結の成功率は年齢や凍結できる卵子数に左右されます。卵子の在庫数が少ない場合は、目標数を確保するために複数回の採卵手術が必要になることもあります。しかし、時間が経つほど卵子の質も数も低下していくため、将来の妊娠の可能性を残したい場合には、卵子凍結も選択肢の一つとして検討すると良いでしょう。

*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。