「子どもをもちたい」 精子提供で夢を叶えた夫婦

夫はいつもマラソンをしていてBMIも正常でしたが、私の方は毎月の生理痛がひどいうえに仕事のストレスも大きかったので、てっきり私に何か問題があるのだろうと思っていました。ところが、検査の結果は夫の精子が検出されないという意外なものでした。3つの病院を受診したところ、無精子症と診断されました。

2024-01-05

「子どもをもちたい」 精子提供で夢を叶えた夫婦

思い描いた人生を実現するため、 精子提供による体外受精の道へ

結婚してから何年経ってもなかなか妊娠しないので、夫と一緒に妊娠前検査を受けることにしました。夫はいつもマラソンをしていてBMIも正常でしたが、私の方は毎月の生理痛がひどいうえに仕事のストレスも大きかったので、てっきり私に何か問題があるのだろうと思っていました。ところが、検査の結果は夫の精子が検出されないという意外なものでした。3つの病院を受診したところ、無精子症と診断されました。

それから西洋医学や東洋医学、民間療法を何年も試しましたが効果はなく、精巣精子採取術を受けても何も見つかりませんでした。当時、夫はずっと事実を受け入れられずにいましたし、結婚以来最大のケンカもしました。夫は「子どもがいない人生なんて考えられない」と非常に落ち込み、どうしても受け入れられない様子でしたが、私はこういう運命なのだから現実を受け入れて、今の生活を大切にしようと思っていました。また当時は里親家庭や養子縁組の説明会にも参加していたのですが、なかなか決められずにいました。そんな中、ある医師から精子提供について聞き、一筋の光明が差したように感じました。夫も「君の子どもなら僕は愛する」と言ってくれたので、私もとうとう折れて、精子提供による体外受精を受けることを決意しました。

採卵とマッチングは同時進行で効率的に、移植に適した胚はPGT-A/PGSで選定

その後、コウノトリのことを知った私たちは、医師から親切で丁寧な説明を聞き、未来への道を歩み出す決意をかためました。ただ、この道も決して容易ではありませんでした。過去数年間病院を転々とするうちに私もいつのまにか高齢になっており、AMHの値はたったの0.8でした。そこで一念発起し、勤務時間が長くストレスも多かった仕事を辞めて、卵子を育てるために毎日の足浴や定期的な運動を行うようにしたところ、3回の採卵手術で11個の卵子の採取に成功し、第1段階の目標を達成することができました。卵子を育て採卵手術を進める間、私たちは同時進行で精子ドナーとのマッチングに必要な四親等表やその他必要書類の準備を行いました。

精子ドナーは書類が揃ってから1ヶ月で見つかりました。こんなに早く見つかるとは思っておらず、夫は感激のあまり会社で涙を流し、私も心の重荷が降りたような安堵感を覚えました。続いて受精が行われ、受精後にはアプリで定期的に更新される胚の培養の様子を確認しました。解凍後の卵子は11個のうち9個が生存しており、培養5日目に5個の胚盤胞が形成され、そのうちBBグレードは2個、BCグレードは3個でした。2個のBBグレードの胚をPGT-A/PGSすると、1個は染色体異常で正常胚は1個だけだったので、迷わずこの胚を移植することにしました。

IVF3.0+を選んだ自分への感謝  妊活の卒業証書を希望に

チャンスは一度しかなかったので移植のタイミングを確認するERA検査を追加で受けたところ、通常の120時間ではなく144時間という結果でした。一般的とされる時間よりも24時間遅かったのです。この検査を受けて良かったと心から思いました。また、検査で甲状腺機能の低下やループス性の血液凝固障害という免疫の問題も見つかったことで内服薬や注射剤を取り入れ、副作用と注射との闘いの日々が始まりました。でも移植から2週間後の再診で医師から「おめでとうございます、妊娠しています。」と告げられ、その時はまだ実感が湧きませんでしたが、8週目に心音が聞こえた瞬間、私のお腹に赤ちゃんがいるという実感が突然湧いてきて思わず泣きそうになりました。

薬の副作用の次は猛烈なつわりとの闘いでした。出血のため通院も必要になり、苦しい日々を過ごしました。つわりに気力を奪われ、子どもを望む夫も切り捨ててしまおうと思ったことが何度もありました。そして妊娠3ヶ月となった時、医師から卒業を伝えられました。コウノトリでは助産まで行われないので、一般の病院に転院して妊婦健診を受ける必要があり、涙ながらに医師と別れを告げるしかありませんでした。

現在、息子は私のそばで楽しそうに転げまわり、周りのものを壊しながら遊んでいます。こんなに元気な子どもがあんなに小さな一つのBBグレードの胚だったなんてとても想像できません。このやんちゃなパワーからすると実はSSグレードだったのでは……!?子どもが生まれてからというもの、夫はいつも「この子を見ていると、これまでの苦労や経験なんて大した事じゃなく感じる」と口癖のように言っています。私自身も、我が子により満たされた人生の喜びをかみしめているところです。コウノトリの先生方やチームの皆さんのサポートがあったおかげで、私たちの夢を叶えることができました。本当にありがとうございました。そして、私たちの所にきてくれた私の息子にも感謝しています。これからも家族で手を取り合って生きていこうね!

 

コメント

  1. 不妊という問題は、多くの夫婦にとって身体的にも精神的にも大きな試練となります。薬も注射も手術も苦手な方にとってはさぞかし大変だったことでしょう。医師から早期卵巣不全を告げられ、複数回の採卵手術を余儀なくされても、あきらめずに治療を頑張りぬいた勇気と強さに、心から尊敬の念を抱きます。災い転じて福となすの言葉通り、この試練はご夫婦に真の一体感を感じさせるものとなったはずです。私たちもお二人の夢を叶えるお手伝いができたことを嬉しく思います。ご夫婦のご経験を共有いただき、ありがとうございました。
  2. 女性の卵子凍結に対する意識が高まっている現在、自身の生殖機能の状態把握するために、AMH数値の定期検査を受けることを習慣にしている方もいらっしゃいます。一方で、男性は精液検査を軽視したり避けたりすることが少なくありません。当院の採精室は、古くて狭くて遮音性能が悪いという従来のイメージとは全く異なり、広々とした空間と柔らかな照明でリラックスして採精を行っていただけます。検体はコンピューターによる分析を行い精度の高い検査結果を得ることができます。
  3. 患者様の治療歴
凍結成熟卵
(MII)
正常受精
(2PN)
良好胚 移植した胚盤胞
11 9 5 5日目/5BB

*実際の治療は医師の診断のもと行っていきます。
本文は編集当時の治療状況、及びご提案です。