2017年ヨーロッパ生殖医学会
ヨーロッパ生殖医学会(European Society of Human Reproduction and Embryology、通称ESHRE)。ESHREは世界で初めての試験管ベビーを誕生させたR.G. Edwards教授とJean Cohen医師が設立しました。
毎年一回ヨーロッパで学会が開催され、沢山の不妊関連の専門家が集まり様々なテーマについて発表を行います。世界で最も先進的な生殖学会の一つです。2017年はスイス第二の都市ジュネーブで開催されました。
コウノトリ生殖医療センターは着床前スクリーニング(PGS)の新技術NGSを導入して以降、継続して実施していた胚盤胞の分子レベル検査を通して2300ケースにおよぶ胚盤胞の染色体データを集積しました。
NGS技術を通して初めて観察が可能な「モザイク型染色体異常」について研究を行い、臨床応用性の評価をまとめた分析結果を、今年のESHREで発表しました。
モザイク型染色体異常(Mitotic errors)は有糸分裂期に発生する異常です。染色体の減数分裂異常(Meiotic error)により発生する染色体異数性(aneuploidy)とは異なる異常となります。
発生率に母体の年齢は関係なく、ケースごとに臨床結果に比較的顕著な差が見られるという特徴があります。
コウノトリ生殖医療センターは2種類の異常の発生率が、各染色体の部分毎に異なる事に注目しました。モザイク型染色体異常は長さの長い染色体で良く見られる異常です。一方、染色体の減数分裂異常は長さの短い染色体で良く見られる異常です。(図一)
興味深いことに、比率の低いモザイク型染色体異常の胚盤胞を移植した場合、短い染色体で異常が発生したケースの方が、着床率が高くなる傾向が見られました。ただし、これは現段階では十分な統計とは言えません。(図二)
この様な胚盤胞の発育過程の異なる時期におけるモザイク型染色体異常の進化は、学者や臨床技術者の興味を引く課題となっています。
今回の分析結果により、モザイク型染色体異常を持つ胚盤胞の秘密ベールの一部を開くことが出きました。これからも、この分野に尽力をしている世界中の研究者達と共に前に進んで行きます。

