2016-02-01

習慣性流産の原因は様々です。病状に応じた対応を行うことで、妊娠を維持することが可能です。

華人健康ネット【文/産婦人科医師】

36歳のHさんは結婚して5年になります。
夫婦共に結婚してすぐに子供を欲しいと思っており、両親達にできるだけ早く孫を抱かせてあげたいと考えていました。
1年間努力して、やっと良い知らせが訪れ、新しい生命の到来を喜んでいました。
しかし、まだ2か月が経たない頃、思いがけず胎児の心拍が確認できず、今回のこの短い間の妊娠をあきらめるしかありませんでした。
傷ついた心をしまい、もう一度次の妊娠に向けて準備することにしました。

それから2年後、またもや同じ悲劇がこともあろうに連続3回も発生しました。
彼女はこの事態を信じられませんでした。なぜ神様は彼女にこんなにも残酷なのでしょう。
彼女の身も心も、繰り返しこのような無情な攻撃を受けていました。
人生において挫折に遭遇することは避けられないことですが、このように気持ちの浮き沈みが激しいと、本当に辛いものです。
旦那さんや家族の支持が無ければ、彼女はこれからどうして自分を信じる気持ちを持っていけるでしょうか?

染色体の異常は習慣性流産を起こしやすい

一通りの検査を行ってみて、やはりHさんの染色体の構造が一般の人と少し異なっていました。
全て46本の染色体なのですが、2対の染色体の位置が変わる現象が起きており、彼女の胚は非常に高い可能性で染色体異常が生じているために発育できなくなり、流産を引き起こします。
原因がこれで分かったので、妊娠の運気は彼女の方に回って来るはずでしょう

しかし実際は思うようにはいかず、以前胚が萎縮して人工流産を行ってから、子宮の内膜が3回の手術による傷に耐えられず、内膜が薄くなり、更に経血量が減ってしまっていました。
現在この2つの難題をどうすればいいのかを考えると、とてつもない無力感に襲われ、この先の道はますます苦しくなっていく中で、彼女はもう諦めようと思っていました。

胚の問題については、幸いなことに現在の医療技術で解決できるものであり、着床前スクリーニング(preimplantation genetic screening)により事前に正常な染色体の胚を確認することで、流産の確率は大幅に下がっています。同時に子宮内膜の状態を検査し、まだ「救い出せる」チャンスがあるかどうかを確認することができます。

子宮内避妊器具+ホルモンの服用で子宮内膜を修復する

幸いにも神は彼女を慈しんでくれ、ようやくPGSで3つの正常な胚を検出しました。
子宮内視鏡で内膜が以前の手術の影響を受けていることが確定し、癒着の現象を引き起こしていました。
子宮内避妊器具を設置し、ホルモンを服用しながら治療を行い、3か月後に子宮内膜の厚さがやっと正常な状態まで回復しました。
この後は、真の妊娠が彼女の体に降臨するかどうかを待つだけとなりました。

2本の線の対を確認しましたが、彼女は既に4回も喜んだ経験しているため、彼女からするとこれはもう珍しい事ではありませんでした。
大切なのは彼女が流産を回避する関門を乗り越えることができるかであり、Hさんは毎日のように祈り続けました。
そしてやっと4か月を切り抜け、羊水検査で正常な結果が確定したので、心の中は興奮で何とも表し難い気持ちになりました。
希望を諦めず、美しい幸せのためだけに頑張り続けたことを神様に感謝しました。

習慣性流産の七大原因 医学は妊娠の補助に介入

いわゆる習慣性流産とは、妊娠20周未満で連続3回以上の流産が起きることをいい、もともと胎児に心拍があったのにその後確認できなくなった、又はまだ心拍まで発展していないのに発育が停止する、又は胚が自然に体外に流れ出る等の状況を含みます。
習慣性流産の原因は以下の通りです。
 
1.子宮構造の異常
おおよそ習慣性流産の15%を占めます。双角子宮、単角子宮、重複子宮、中隔子宮、粘膜下筋腫又は子宮内膜ポリープなどの先天性の子宮奇形となります。
卵管のX線検査、子宮内視鏡、腹腔鏡又はMRIにより異常の構造を検査し、手術を行って治療していきます。
 
2.子宮頸管無力症
先天性のもの、子宮頸部円錐切除のような手術により引きおこされた後天性のものがあります。
一旦これらの問題を見つけた場合は、妊娠3か月後に頸管縫縮術により予防することができます。
 
3.染色体の問題
早期流産のうち、おおよそ60%近くが染色体の異常となります。
言い換えれば、異常の胚は自分から淘汰する運命にあり、父母双方の要因により引き起こされたものではありません。
しかし約3.5%の流産は、確実に父母双方のうち一人に染色体転座(translocation)の現象が生じ、旦那さんのY染色体に遺伝子の異常が起こることがあります。
 
4.ホルモンの分泌異常
最も典型的なものは多嚢胞性卵巣症候群です。
体内のインスリン分泌に対して抵抗性が生じるため、又は体内に雄性のホルモンが高すぎるため、卵子の品質が悪くなり、胚の発育に必要な黄体ホルモンを提供することができず、自然流産が発生する確率が高くなります。
 
これらの疾患は時間を要して体質を調整しなければならず、血糖値を下げる薬でコントロールしてから、薬又は注射剤投与などの方法により排卵の補助及び黄体機能を強化すれば、大体の女性は順調に妊娠することができます。
また、甲状腺機能の亢進や機能の低下など内分泌の問題も、甲状腺機能の状態について細かく注意を払わなければなりません。
 
機能がなおも理想の範囲内に調節できていない場合は、流産しやすくなります。
糖尿病の疾患について更に注意して病状をコントロールしなければなりません。
それでも血糖値のコントロールがうまくいかない場合、流産の確率が高くなるだけでなく、胎児奇形が生じやすくなる恐れがあります。
 
5.免疫システムの問題
通常他生物は人体からいえば自然に排除されるものであり、特に胎児の半分の遺伝子は旦那さんから来ています。
しかし高等動物の妊娠の過程は、神様が完璧な準備を用意してくれているため、大多数の人は胎児が自分の免疫システムに攻撃されることはありません。
しかし少数の人は体内の防御システムが先天的に破壊されていることにより、抗体が生じて胚を攻撃し、流産を引き起こします。
 
最もよくあるのは抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome, APS)です。これは血液凝固異常であり、体内に抗体をつくり、全身の細小血管に血栓が形成されます。
そのため流産を引き起こすだけでなく、妊娠した後に子癇前症、早産、胎盤早期剥離を引き起こす確率が非常に高くなります。
臨床上では特別な症状はなくても、流産してから更に検査をしてみて、体内の抗リン脂質抗体がかなり高いことが見つかることがあります。
 
診断で確定しさえすれば、一般的には先ずアスピリンやステロイドによりしばらく治療を行い、その後妊娠の段階に入ります。
深刻な場合は、ナドロパリンなどの抗凝固薬を投与する必要があり、少数の人には免疫グロブリンを投与する必要があります。
その他全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどの自己免疫疾患のような問題は、妊娠前に病状をコントロールしていない場合は、これも流産を引き起こしやすくなります。
 
6.感染症
トキソプラズマ、風疹、クラミジア、細菌、淋病等の感染がある場合は、妊娠した後に流産を引き起こしやすくなるため、先ず感染問題を治療しなければなりません。
 
7.生活スタイル
生活が不規則、プレッシャーが大きい、喫煙、飲酒、薬物乱用等がある場合、流産を引き起こしやすくなります。
 
8.年齢
女性の生殖機能は35歳を過ぎてから卵子が老化し、正常ではない胚が形成されやすくなるため、流産の確率が高くなります。

習慣性流産は臨床上の原因はとても多く、複雑です。最新の注意を払って検査をすることで、適切な原因を探し出すことができます。
Hさんにとって、4回の流産を経験したことは悲劇としかいいようがなく、本当であれば全てを諦めていたところであり、5回目の流産のリスクを冒すことはもう二度と経験したくないことでした。
幸いにも医学の力を借り、且つ自分自身も努力し続け、ようやく習慣性流産と決別することができました。