高い成功率
子宝を祈る あなたと私の物語
08 / 19 / 2016
朗報を待ちわびて33年、57歳で男女の双子を出産
 昨日の午後にかかってきた一本の電話、電話の向こうからはHさんの「先生、無事出産しました。母子ともに健康です!」という声が聞こえてきました。
これを聞いた私はとても興奮して、すぐにセンターの同僚たちに知らせました。
この朗報に院内でどっと歓声が沸き起こりました。Hさんを特別扱いしているわけではなく、彼女の決心と意志の強さに皆が感銘を受けたからです。

  ある日の午後、50歳を超えたであろう一人のご婦人が診察を受けに来ました。
私は、年齢からしておそらく婦人科の病気か更年期障害の問題で受診したのだろうと思いました。私は初診では特に注意してカルテの詳細を確認します。
「え?不妊症?」
50歳以上で不妊症で受診する患者は滅多にいませんが、このHさんはもう56歳でした。

とても素直で誠実そうなこのご婦人は、はっきりとこう言いました。
「こちらの病院で卵子提供を受けることができると聞いたので、受けてみたいんです。」私は卵子提供の流れを説明し、彼女の年齢で妊娠した場合に、健康へどのような影響があるか、また最も重要な子供への教育の問題についても話をしました。
彼女は私の一字一句をとても真剣に聞いていました。
私は説明をしながら、彼女は本当に治療を受けるのだろうか、ただ話を聞きに来ただけではないかと疑問に思っていました。

 ラボの担当者と相談した後に分かったのは、Hさんは若い時に子供ができず、治療に100万元(台湾ドル)近くもかけ、いろいろな方法を試したにもかかわらずどれも成功しなかったそうなのです。
何年か体を休めた後、子供を授かりたいという希望が再燃しましたが、この年齢では卵子提供を受けるしかないということをよく分かっていました。

 その後何か月か経ち、彼女は卵子提供のマッチングを受け、1回目の治療を開始しました。
残念なことにこの時は失敗に終わりましたが、彼女はそれでも諦めず、「まあ、本当に申し訳ないわ。せっかくいただいた卵子を台無しにしてしまって!」と半分冗談を言うほどでした。

彼女は失敗してもいつもユーモアあふれる前向きな態度でそれに向き合い、また積極的に2回目、3回目の治療を受けました。
私たちは、高齢妊婦になろうと一心にがんばっているこのHさんへの見方が完全に変わり、彼女の決心と意志の強さを誰も疑うことはありませんでした。

 Hさんは毎回ほとんど一人で来院していました。精子を採取する当日だけ、ご主人と会うことができました。ご主人は寡黙ながらもHさんを支えていました。
ご夫婦の暮らし向きは大変良いというわけではありませんでしたが、それでもできる限りのことをするつもりでした。

 3回目の治療の時、Hさんはすでに57歳になっていました。
現在の人工生殖法は治療を受ける年齢に制限を設けていませんが、正直に言うと、私は彼らの夢の実現を手助けしてよいものかどうか迷ったことがありました。
このような高齢の方が妊婦となった場合、他の人よりも妊娠・出産へのリスクは大きくなります。また彼らの子供への教育の問題もあります。子供が20歳になる頃、父親はもう80歳の老人です。このような家庭が正常と言えるのだろうか?と悩みもしました。

 しかし、別の角度から見ると、未婚で妊娠し、子供を育てられずに捨ててしまうような若い母親に比べれば、切実に子供を欲しがっている57歳の母親の方がよっぽど母親としての資格があるのではないだろうかとも思ったのです。

 Hさんは堅い意志を持って我々の協力を受け、そしてたくさんの人に祝福されながら、ついに3回目の治療で双子を妊娠することに成功しました。
妊娠期間中は、前置胎盤が見られた以外は、幸いに特別な問題もなく無事に8か月目を迎えました。
8か月目に入ると、今度は全身がひどい浮腫みに襲われ、血圧も上がり始めました。これにより肝臓、腎臓の機能も影響を受け、子癇前症の症状も出てきていたため、流産防止のため入院して安静を保つことにしました。

 ただ、Hさんはとても「要求の多い」患者さんで、入院2日目でもう退院したいと言い出しました。
「王先生、私は大丈夫ですよ。赤ちゃんが健康だったらそれでいいんです。大人は体調が悪いと言うことができるけど、赤ちゃんは言えないでしょう。できるだけお腹の中に長くいてもらいたいんです。それにお店のこともあるし。」私は毎回の回診でHさんにその時の身体の状況がどれだけ重大であるか、また退院したらどれだけのリスクがあるのかを懇々と説明しなければなりませんでした。

 医師から看護士、事務員まで、センターの同僚みんながHさんのことを心配してお見舞いに行きました。
そしてみんなの説得が功を奏してHさんは1週間の入院後メディカルセンターへ転院し、その後無事に出産することができました。

 電話で出産の報告を聞いた時、私はHさんが心の底から喜んでいることを実感しました。
母親になるという30年来の夢をついに手にしたHさんの喜びはどれだけのものか、計り知れません。
しかし、これから彼女は二人の大切な赤ちゃんをどうやって育てていくかという問題に対峙しなければなりません。
また他人からの好奇の目に晒されることもあるかもしれません。
私は、Hさんの夢を実現するお手伝いができたことをとても光栄に思っています。
私や他の全ての同僚たちも、彼女の勇気、決心、そして不屈の精神に深く感動しました。Hさんの家族皆さんのお幸せを心より祈っています。

王懷麟医師2008年執筆
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